ロバート・キヨサキは、投資家であり、ビジネスマンであり、ベストセラー作家だ。彼の著書「金持ち父さん 貧乏父さん」は、金持ちがお金について自 分の子供たちに教えていること、中流以下の人たちが教えていないことを明かしている。「人々がお金で苦しむ最大の理由は、学校に何年通ってもお金について 全く学んでいないからだ。人々は結局、お金のために働くことを学ぶ…だが、お金を自分のために働かせる方法を学ぶことは決してない」と、ロバートは言う。

ハワイで生まれ育ったロバートは、日系四世のアメリカ人。教育家として名高い一家に生まれた。父親はハワイ州の教育長だった。ハイスクールを出たロバートはニューヨークで教育を受ける。卒業後、彼は米国海兵隊に入隊、士官、軍用ヘリのパイロットとしてベトナムに出征した。

帰還後、ロバートはゼロックス社に就職したが、1977年には会社を立ち上げ、ナイロンとベルクロを使った世界初のサーファー用財布を発売、これが全世界で驚異的な売上を記録する。

1985年、ロバートは国際的な教育企業を設立した。この会社は、世界の何万という人々にビジネスと投資について教えた。

ロバートは47歳という若さで引退したあと、大好きな投資を続けていた。この「引退」中に書かれたのが、ニューヨークタイムズのNo.1ベストセ ラー「金持ち父さん 貧乏父さん」だった。続いて「金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント」、「金持ち父さんの投資ガイド」を執筆、この3冊はす べて、ウォールストリート・ジャーナル紙、USAトゥデイ紙、ニューヨークタイムズ紙のベストセラーリストに同時にトップテン入りを果たしている。 2001年1月には「金持ち父さんの子供はみんな天才」が刊行された。

「持てる者」と「持たざる者」とのギャップがますます広がることを憂えてロバートが考案したのが、ボードゲーム「CASHFLOWR101」だ。こ れは特許を取得したゲームで、金持ち父さんが長年かけて彼に教えたお金に関する戦略と同じものを教えてくれる。ロバートが47歳で引退できたのも、このお 金に関する戦略のおかげなのだ。

ロバートが手がけているのは、不動産投資やビジネスの売買・構築だが、彼の本当の情熱は教育に向けられている。彼は、お金に関する教育の分野で非常 に評価の高い講演者であり、彼の講演は、世界中の聴衆に大きな元気を与えている。ロバートは、オプラ・ウィンフリー・ショーをはじめ、米国トップのテレ ビ・ラジオ番組に出演している。

ロバートは、自分の経済状態を向上させたい人々に、次のような意味深いメッセージを送っている。「お金を手にするたびにあなたは、自分が金持ちになるか、貧乏になるか、中流階級になるかを選ぶ力を持っているのだ。」








金持ちの父と貧乏な父だ。一人は高い教育を受け、知的レベルも高かった。

四年制の大学を二年で卒業し博士号を取得、その後もさらに高度な教育を受けるためにスタンフォード、シカゴ、ノースウェスタンと三つの大学をはしごした。どの学校でも成績優秀だったため、授業料はすべて奨学金でまかなうことが出来たそうだ。

もう一人の父はハイスクールすら卒業していない。二人の父はどちらも生涯を通じてよく働いた。二人とも仕事はうまくいっていて収入も結構多かった。それなのに、一方の父は死ぬまでお金に苦労した。そして、もう一方の父はハワイで最も裕福な人間の一人になった。

一方の父は家族への遺産だけでなく、慈善事業や協会の活動にも何千万ドルという金を遺した。もう一方の父が遺したのは未払いの請求書だけだった。二 人ともたくましく、人を惹きつける魅力を持ち、まわりの人に影響力を持つ存在だった。二人とも私にあれこれとアドバイスをしてくれたが、その内容は異なっ ていた。教育が大切であると信じている点では、二人とも共通していたが、「勉強しろ」と勧める対象が異なっていたのだ。


もし私に一人しか父親がいなかったら、そのアドバイスを受け入れるか反発するか、二つに一つしかなかったと思う。だが、実際には二人いたために、裕 福な人間とそうでない人間の二人から、まったく相反するアドバイスを受け、その中から選択する自由が与えられた。また、二人の父親がいたおかげで、私は単 純に一方のアドバイスを受け入れもう一方を無視するのではなく、しっかりと自分で考え、両方を比較して選択する事も学んだ。



だがそこに問題が無かったわけではない。というのは、その頃は、のちに金持ちになる父はまだ金持ちではなかったし、一生お金の苦労をすることになる父もまだそうと決まっていたわけではないからだ。二人とも仕事を始めたばかりで、家族を養うための金を稼ぐのに必死だった。



しかし、その時点で二人のお金に関しての考え方はまったく違っていた。

たとえばこんなふうだ。一方の父がよく「金への執着は諸悪の根源だ」と言っていたのに対して、もう一人の父は、「お金が無いことが諸悪の根源だ」と 言っていた。この二人の父のことを私は大好きだったが、そのため自分がどんな見方をすべきかを考えさせられたし、最後にはどちらか一方を選ばなければなら なかった。



それぞれの父のアドバイスについて考えるうちに、私はその人の考え方がその人の人生に力や影響を与えるという重大な事実に気づくことができた。たと えば貧乏父さんは、「それを買う金はない」と言うのが口癖だった。金持ち父さんにとってそれは禁句だった。金持ち父さんは、こんなときは「どうやったらそ れを買うためのお金を作り出せるだろうか?」と言わなくてはいけないと私に教えた。一方の言葉は断定的、もう一方の言葉は答えを要求する疑問文だ。前者を 口にすればことはそれで片付く。もう一方はその後自分で考える作業を余儀なくされる。のちに金持ちになった父は、何も考えずに「それを買うためのお金はな い」と言ってしまうと頭が働くのをやめてしまうのだと説明してくれた。「どうすれば買えるのだろうか」と質問すれば、あなたの脳を働かせることができるの だ。



金持ち父さんは、「欲しいものは何でも買いなさい」と言っているわけではない。世界で最も優秀なコンピュータ、つまり自分の頭を使えと言いたかったのだ。金持ち父さんはこう言っていた。「私の脳は毎日強くなっていく。鍛えているからね。頭が強くなればなるほど、それだけ多くのお金を儲けることができるんだよ」彼は、「それを買うお金はない」と反射的に言うのは、頭が怠け者になっている証拠だと思っていた。




どちらの父もよく働いたが、お金のことになると貧乏父さんは脳を休ませる癖があった。いっぽう金持ち父さんは、脳を鍛えることを習慣にしていた。長い目で見ると、その結果、一人の父は経済的に強くなり、もう一人は弱くなった。



頭の中の考えがその人の人生を作る




存在感の強い二人の父親のもとで育った私は、異なる考え方が人間の人生に異なった影響を与えるのを目の当たりにすることができた。その結果、「頭の中の考えがその人の人生を作る」という言葉が本当であることを知った。



思考がどんな大きな力を持っているか、それは測ることは出来ないし、普段はその力のありがたみなどわからない。だが、私は子供ながら、自分が何を考え、それをどう表現するかがどんなに大切か気がついた。そして貧乏父さんが貧乏なのは、稼ぐお金の量が少ないからではなく(実際のところかなり収入はあった)考え方や行動の仕方が原因なのだと思い当たった。二人の父を持ったおかげで、少年の私は自分がどちらの考えに従うか、慎重に考えなければならない事を身をもって知らされた…ぼくはどちらの言うことを聞いたらいいのだろう?「金持ち父さん」の言うことか?「貧乏父さん」の言うことか?




人生の選択

九歳のとき私は、お金については金持ち父さんの言うことを聞き、彼から学ぼうと決心した。そして、どんなにたくさんの大学の学位を持っていようが、貧乏父さん、つまり私の実の父の言うことは聞かないことを選んだのだった。ここまで読んでおわかりだろうが、こちらの父の方がたくさんの大学の卒業資格を持っていた私の実の父だ。